9日付朝刊では、Appleのティム・クックCEOが “The new iPad” をアナウンスするシーンを大きな写真入りで紹介しており、大見出しは「アップル 陰る神通力」、中見出しは「乏しいサプライズ 失望の声」となっている。
記事本文のなかでは、『市場には「驚きに乏しい」と冷ややかな見方も出た』、『デザインは「2」と同じ。仕様も事前予測通りで、驚きに乏しい』という外資系アナリストの意見を引用している。
また、同じ産経グループのフジサンケイビジネスアイも同様の内容の記事を配信した。
こちらの大見出しは「新iPad 際立つ美しさも肩透かし?」、中見出しは「性能進化…革新さは見られず」となっている。
本文には、日本時間8日にApple Japanが行った新製品発表会に参加した記者による記事が掲載されており、『革新的なiPad 3の登場を期待していたファンには肩透かしの感も強く、受け止め方はさまざまだ』、『実機を目にした瞬間の正直な感想は「拍子抜け」。現行の「iPad 2」と外観がほとんど似ていたからだ』などと、言いたい放題だ。
第3世代の「iPad」は、その中身に多くの革新性が詰まっており、「iPhone 4」から「iPhone 4S」への(失礼ながら)“マイナーアップデート”とは異なり(それでも、ご存知の通り「4S」は世界中で大ヒットとなっているが)、歴史上もっとも美しいタブレット端末向けディスプレイをはじめ、前世代比で2倍のグラフィックス性能、iPadにネイティブ対応するバラエティに富んだ高性能アプリのラインアップなど、故スティーブ・ジョブズ氏が思い描いていた「革新的な魔法のデバイス」とそのエコシステムにかなり近づいたように思える。Appleが「iPad 3」ではなく、単に「新しいiPad」を呼んでいるのも、こうした背景からであり、クックCEOが強調していた「ポストPC時代」が本格的に到来しつつあるなかでの新製品投入だったといえる。Appleの新製品発表イベントをご覧になっただろうか?1時間半にもおよぶ発表会のなかで、新型「iPad」の紹介はそこそこに、そのほとんどが「iPad」向けアプリの紹介に割かれた。また、Appleの「iPad」を紹介するウェブサイトを見てみても、アプリをいかに重要視しているのかが分かるだろう。
「iPad」や「iPhone」はコンピュータであり、産経新聞の記者の言うところの「見た目」も大事な要素だが、タブレットやスマートフォンというカテゴリが成熟しつつあるなかで、そのデバイスを使って一体何ができるのかに焦点や消費者のニーズが移行しつつあることを忘れてはならない。
新型「iPad」は空前の大ヒットになるはずだ。なぜなら、第3世代「iPad」は、これまでで最高のタブレットデバイスであるとともに、“成熟した”革新性にあふれており、また、消費者は失望などしておらず、入手するのに数カ月待ちの状態がやってくるのは確実だろう。